お役立ちコラム

平成30年度 介護報酬改定について

 

平成30年度介護報酬改定では自立支援・重度化防止を本軸に、改定率プラス0.54%の介護報酬引き上げが行われます。通所介護においてはアウトカム評価や生活機能向上連携加算、機能訓練指導員の対象資格緩和などの自立支援に向けた取り組みが行われます。

一方で、大規模通所介護事業所の基本報酬引き下げやサービス提供時間区分の見直しなど、これまで3~5時間、5~7時間、7~9時間で行っていた提供時間短縮による基本報酬引き下げの可能性も示唆されています。

これは2025年問題と社会保障費の財政難が強く関わっており、日本の超高齢社会の持続可能性を考える上でも、通所介護事業所のあり方を考える上でも、意識して考える必要がありそうです。

 

【平成30年度の介護報酬改定では何がどう変わる?改定の経緯と今後の動向】

平成12年に介護保険法が施行して以来、介護保険制度の改定が行われており、平成27年度の改定では大幅なマイナス改定の年となりました。平成30年度介護報酬改定では、「自立支援・重度化防止」を軸に改定率+0.54%プラス改定、事業所規模ごとにメリハリのある改定が行われることになります。

 

※介護報酬改定の背景

我が国の高齢化は急速に進んでおり、1994年に高齢化率が14%を超え「高齢社会」に突入した。団塊の世代が定年退職を迎えた2007年には21%を超え、諸外国に先駆け「超高齢社会」になりました。2014年時点での高齢者数は3,300万人であり、国立社会保障・人口問題研究所(2012)の日本の将来推計人口によると、今後年々増加し2040年に3900万人弱規模でピークアウトするまで増加基調は続くと見込まれています。

 

また、高齢化は都市部で急速に進展するとされており、2005年から2025年までの20年間における高齢者の増加数のうち約60%は東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県、千葉県、北海道、兵庫県、福岡県の都市部(特に関東圏)で占めるようになると報告されています。

 

人口構造変化のターニングポイントは2025年であり、金の卵として戦後の象徴とされている19471949年生まれの「団塊の世代」が75歳以上となる時期とされています。

 

これらの要因もあり、厚生労働省は地域包括ケアシステムを段階的に構築しつつ、介護現場に「自立支援」「重度化防止」の取り組みを推進しています。

 

※介護報酬改定のあらすじ

これまでの介護保険制度は、平成12年度(2000年)に施行して以来「3年に1度」を目安にその制度の改定が行われてきました。

 

平成27年度介護報酬改定では、通所介護を中心に基本報酬のマイナス改定、高額所得者の自己負担2割の実施、特別養護老人ホームの長期入所対象者の変更などを行いました。

 

平成30年度介護報酬改定では、6年に一度の診療報酬改定と同じタイミングで行われ、診療報酬との整合性を図りながら、通常の介護報酬改定以上に、医療と介護の連携 が強化されることになります。

 

平成12年度(2000)の改定:介護保険法施行

平成18年度(2006)の改定:介護予防・地域密着型という概念を提唱

平成24年度(2012)の改定:地域包括ケアという概念を提唱

平成27年度(2015)の改定:介護報酬の大幅な減額改定

高額所得者の自己負担2割の実施

特別養護老人ホームの長期入所対象者の変更

 

これらの介護報酬改定では、2025年に団塊の世代が75歳以上を迎えることによって超高齢化率が急速に高まるため社会保障費が増え続け、財政を圧迫することを懸念しての措置です。少子化および高齢化の進展により、介護を必要とする者の増大する一方で、 その支え手が減少することが見込まれる中、政府は介護保険制度の持続可能性を高める取り組みが求められます。

 

※平成18年度介護報酬改定

平成12年度(2000年)に介護保険制度の施行後、平成18年度(2006年)に初めての介護報酬改定が行われました。

 

・介護予防の重視への転換

要支援者への給付を「介護予防給付」として新たに創設しました。その介護予防ケアマネジメントは、地域包括支援センター(介護予防支援事業所)が実施。そしてそれぞれの市区町村が介護予防事業や包括的支援事業などの「地域支援事業」の実施するようになりました。

 

・施設給付の見直し

施設などの食費・居住費を保険給付の対象外(全額自己負担)にしました。一方で、低所得の利用者様への補足給付を新たに設けました。

・地域密着型サービスの創設

地域密着型サービスの創設や介護サービス情報の公表、負担能力を細かく反映した「第1号被保険者の保険料」の設定などを設けました。

 

※平成24年度介護報酬改定

介護保険法が施行されて12年が経過した平成24年度介護報酬改定では、サービスの利用者数が、創設当初の約3倍になり「重度の要介護者の増加」「介護力のない単身世帯や高齢者のみ世帯の増加」「介護人材の確保」などが課題となりました。そこで、厚生労働省は、高齢者が地域で自立した生活を営むことができるように「地域包括ケアシステム」という概念を提唱しました。

 

・地域包括ケアシステムを提唱

医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援「地域包括ケアシステム」を提唱しました。その上で日常生活圏域ごとに地域ニーズや課題の把握を踏まえた介護保険事業計画を策定、単身者や重度の要介護者に対応できるように24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスを創設しました。

 

・介護人材の確保とサービスの質の向上

介護人材の確保とサービスの質の向上を目的に介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員などによる「痰の吸引」を可能としました。また、介護事業所における労働遵守を徹底し、介護サービス情報公表制度の見直しを実施しました。

 

・高齢者の住まいの整備

有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を追加。 厚生労働省と国土交通省の連携によるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進しました。

 

・認知症対策の推進

市民後見人の育成及び活用など、市町村における高齢者の権利擁護を推進しました。

※平成27年度介護報酬改定

原則、6年に1度の介護報酬改定でしたが、平成27年度(2015年)に異例の改正を行いました。この平成27年度介護報酬改定により、大幅な介護報酬マイナス改定が行われたため「マイナス改定の年」と呼ばれています。

・地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実

在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行しました。

 

・費用負担の公平化(介護保険法関係)

低所得者の保険料軽減を拡充し、低所得の施設利用者様の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加しました。一方で一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げが行われました。

 

・新たな基金の創設と医療・介護の連携強化

都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置しました。

 

※平成30年度介護報酬改定

平成30年度の介護保険改定のポイント

1)高額所得者の自己負担3割の導入

平成27年度の介護保険法改定により、利用者様の年収によって介護保険サービス負担額が2割となりました。

平成30年度の介護報酬改定では、より所得が高い人の負担割合が3割負担となります。

現時点での議論では、3割負担の対象となるのは「1.合計所得金額が220万円以上の人」「2.単身世帯で年金収入とその他の所得金額が340万円以上の人(夫婦世帯の場合は463万円以上の人)」としています。

厚生労働省の試算によると、この対象条件の場合、3割負担の対象となるのは全体の「約3%」としており、多くの事業所や利用者には大きな変化はないでしょう。

 

2)訪問介護・通所介護の基本報酬の減額

平成27年度介護保険法の改定では、介護サービス事業全体の平均収支差率は「約45%」まで抑えられています。

 

そんな中、訪問介護の平均収支差率は「5.5%」、通所介護は「6.3%」と他の介護サービスに比べて、まだまだ収支率が高いことになります。

 

これらのことから平成30年度の介護報酬改定では、訪問介護と通所介護の基本報酬のさらなる減額が行われることになります。介護業界全体としては改定率+0.54%ですが、通所介護事業所においては、サービス提供時間の見直しが行われるために、実質的には基本報酬の引き下げが行われるようになります。

3)通所介護にインセンティブ制度の導入

高齢者の自立支援や重度化防止につながる取り組み「アウトカムの導入」を来年度から通所介護の報酬の多寡に反映させる方針を報告しています。

 

この報告によると、 アウトカム指標には「バーセルインデックス(Barthel Index)」を活用し、評価期間の中で利用者様のADLを維持・改善させた事業所においては、その後の一定期間にわたって高い対価を得られるようにするインセンティブ制度を設ける予定です。

 

Barthel IndexBI:バーセルインデックス)とは、食事や着替えなどの日常生活の能力を評価する検査方法で、病院や介護現場で活用されています。Barthel Indexの頭文字から「BI」と略されることもあります。

 

バーセルインデックスの評価項目:全10項目で構成され、各項目を自立度に応じて15点・10点・5点・0点で採点します。採点方法もかんたんで、100点満点で採点できるので見た目にも分かりやすい評価方法です。

 

バーセルインデックスは「しているADL」の評価で知られているFIMとは異なり「できるADL」を評価します。

 

バーセルインデックスは、FIMに比べて採点方法が簡易のため評価がしやすく、100点満点でかんたんに評価することができるADL評価です。

 

バーセルインデックスの評価は、介護現場の中でも通所リハの「59.1%」、通所介護の「10.8%」がADLの評価指標として活用されていることが分かります。

 

一方で、FIMの評価は、通所リハの「14.3%」、通所介護の「9.7%」がADLの評価指標として活用されています。

 

医療現場では患者様のADL評価は必須となっていますが、介護現場の中でも通所介護(デイサービス)の「27.3%」 しか評価指標を活用できていないのが現状です。

 

【バーセルインデックスの特徴】

① 評価項目は、全10項目

② 「できるADL」を評価する

③ 採点は、各項目を0点〜15点で評価する

④ 満点は100点で、最低点は0点とする

⑤ 移動・移乗の項目の配点が高い

 

【バーセルインデックスのメリット】

① 採点が簡便で時間がかからない

② 満点100点のため、分かり易い

③ 世界共通の評価法

 

【バーセルインデックスのデメリット】

FIMに比べて点数が大まか

② 細かいADL能力を把握しにくい

③ 採点の根拠が明らかではない

 

【バーセルインデックスの評価項目】

(1)食事

(2)移乗(車椅子からベッドへ)

(3)整容

(4)トイレ動作

(5)入浴

(6)歩行

(7)階段昇降

(8)着替え

(9)排便コントロール

(10)排尿コントロール

 

FIMの評価項目は18項目と多く、採点方法が細かく規定されているため病院などのADL評価としてよく活用されています。

 

FIM評価の特徴】

①評価項目は、計18項目

②しているADLを評価する

③採点は、1点〜7点で評価する

④満点は126点で、最低点は18点とする

⑤コミュニケーション能力と社会的認知能力の認知項目も評価できる

 

FIM評価のメリット】

①採点方法が細かく規定されている

ADLの自立度と介護量を点数で把握することができる

③世界共通の評価のため研究や発表の際にデータの集約として活用しやすい

 

(4) 地域密着型デイサービスの指定拒否が可能

平成27年度介護報酬改定により、定員数が18名以下の小規模デイサービスは、大規模・通常規模のサテライト型を除き、地域密着型デイサービスへと分類されることになりました。

 

平成30年度介護報酬改定では、この地域密着型デイサービスの指定拒否が市区町村によって可能になります。

 

指定拒否の要件としては、「1.市区町村の見込み数がオーバーする場合(介護保険事業計画で定める地域密着型サービスの見込み量をオーバーする場合)、または介護保険事業計画の達成に支障をきたす恐れがある場合」「2.市区町村の区域内に定期巡回・随時対応型サービスや小規模多機能型サービスがある場合」があります。

 

(5) 新しく介護医療院が誕生

平成30年度介護報酬改定では、介護保険施設に新たに加わるのが「介護医療院」です。

介護医療院では、主に長期的に療養が必要な要介護者に対して、療養上の管理のもとで介護や機能訓練を行うことを目的として誕生します。

 

医療と介護の一体的な提供が前提となるため、平成30年度に同時に改定される医療保険法にも位置付けられています。

 

平成273月時点で、約1400施設ある介護療養病床が介護医療インへとスムーズに移行できるかについては、今後設定される具体的な設備基準・人員基準・運営基準および報酬が大きなポイントとなります。

 

(6) 介護保険・障害福祉の共生型サービスが開始

平成30年度介護報酬改定では、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法にまたがって共生型サービスが開始されます。共生型サービスでは、介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に利用できるようになります。

 

現時点では、共存型デイサービスの対象となるのは、訪問介護(ホームヘルパー)や通所介護(デイサービス)、ショートステイなどが検討されています。

これらの介護保険サービスを運営する事業者がいずれかの法律に基づく基準を満たしてサービス指定を受けることで、他の法律による指定を受けやすくする特例を設けます。

(7) 新しい地域支援事業が開始

介護保険制度の地域支援事業は、大きく「1.総合事業」「2.包括的支援事業」「3.任意事業」に分かれています。その中でも「2.包括的支援事業」に関しては、以下の3つの事業が措置期間を終え、平成304月から完全実施されます。

 

平成30年4月から開始する包括的支援事業

1.認知症総合支援事業

2.在宅医療・介護連携推進事業

3.生活支援体制整備事業

 

(8) 特養の看取り体制に対する報酬体系の導入

特養の医師配置の現状をみると、常勤医師がいる割合は未だ「1%程度」です。

平成27年度の介護保険法の改定では、特養の早期からの看取り体制に関わる加算がて暑くなりましたが、今後の問題はそれをフォローできる体制です。

そのため、平成30年度介護報酬改定では、特養の配置医師の積極的な関わりや外部の医師、歯科医師、薬剤師、看護師が関わりやすい報酬体系を目指していくことになります。

 

(9) 有料老人ホームの開設・運営の規制強化

平成30年度介護報酬改定により、有料老人ホームから都道府県への提出事項として「入居者が適切なホームを洗濯するために必要となる情報」を含めることが決まりました。

具体的には、施設概要や利用料金の他に、提供される介護内容などが想定されています。さらに、これらの情報は、都道府県によって一般公開するように求められています。

また、運営に問題がある有料老人ホームに対しては、立ち入り調査や業務改善命令に加えて、事業の制限や停止を命令する権限も可能となります。ただし、入居者保護に必要である場合のみとなっています。

この場合は、都道府県が入居者に対して介護支援を継続的に受けられるように必要な助言などを行うこととしています。

 

※平成30年度の介護報酬改定の改定スケジュール

12月 :介護報酬改定案 諮問・答申

3月上旬:単位や要件など公表(官報告示) 

3月下旬:厚労省改定Q&A

4月  :介護報酬改定

 

平成30年度の介護保険法の制度では、介護経営がより厳しさを増していきます。特に今回の介護報酬改定において通常規模以上の通所介護事業所では実質的な引き下げとなり、安定的な介護経営を理想的に推進していくためにも加算算定は経営的に最重要課題となります。

 

日本の社会保障給付費は、2016年度の時点で「約118兆円」を上回っており、国民医療費は「約40兆円超」、介護保険給付費は「約10兆円」となっています。団塊の世代が75歳以上を迎え、超高齢化率が急速に高まる2025年には、国民医療費「約60兆円」、介護保険給付費は「約21兆円」に膨らむ予測です。

このような中、2015年の介護報酬改定では9年ぶりの介護報酬のマイナス改定となり、介護事業所の倒産件数は、2015年は「76件」、2016年は「108件」と過去最多数となっています。2018年(平成30年度)の介護報酬改定では、さらに厳しい制度が設けれることが予想されます。



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