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医師の不足・偏在問題

 

「医師不足」が問題になっている。日本では年間約4000人ずつ医師は増えているが、都市部に集中しており、地方部では医師不足が深刻化している。

 

医師不足とは、現在行われている医療に対して医師の数が足りないことです。1980年代には、各県一医大構想の影響もあって人口に占める医師の数が十分でしたが、80年代後半の医学部人員削減が始まったあたりから徐々に減少し始めます。いくつかの原因があると考えられますが、特に不足が目立つ診療科で見ると、小児科、産婦人科、外科などで、これらの科に関しては24時間体制でスタンバイしていなければならないことや、問題が生じた場合の訴訟問題など、医師自体に掛かる負荷の大きさが問題になっています。地域で見ると、地方や離島などのへき地です。多くの医師は、設備の充実した、医療の先端を学ぶことを望み、都心部の大病院を希望しているという現状もあります。今後高齢化が進み、ますます医療に従事する人の数が必要となるなかで、こういった流れをどう変えていくかが課題となっています。

 

そもそも医師不足は、2004(平成16)年度から「臨床研修制度」が導入された結果、発生した。この制度は医師免許の取得後に2年間、診療研修を積む制度だ。それ以前の研修は出身大学の医局を中心に行われていた。それが同制度によって研修医が研修先の病院を自由に選択できるようになり、症例が多く勤務条件の良い都市部の民間病院に希望が集中し、大学病院が働き手の研修医を確保しにくくなった。

そこで大学は周辺の関連病院に派遣していた医師を次々と引き揚げた。その結果、医師が足りなくなったわけだ。

 

現在、勤務医は全国に30万人ほどいる。医学部の定員を増やすことで医師の数自体は年間、約4000人ずつ増えてきたが、それでも足りないというのだ。なぜだろうか?

 

※日本の医師不足の原因

・医師の絶対数の不足

・外来患者数に対する医師不足

・病院での必要医師数の不足

・地域偏在による不足

・診療科に属する医師の需給不均衡による不足

・給与レベルに属する医師の偏在による不足

・業務量増大による医師不足

・集約化不足による医師不足

 

不足しているのは病院勤務医だ。医師の数を増やしても、医師は楽に働けてそれなりにもうかる「ビル診」などの開業医に流れる傾向が強い。それに大学医学部の定員数を増やしても、実際に医師数が増えるには少なくとも10年はかかる。すぐには効き目が出ない。

 

・拘束時間が長く、医療事故の訴訟が多いなどその勤務の過酷さから嫌われる産婦人科や小児科、麻酔科、救急医療といった診療科で働く病院勤務医の労働環境を改善しなければならない。

・開業医の年収は勤務医の1.8倍にも上るといわれる。この問題を解消するためにこれまでも、診療報酬面で勤務医の収入を引き上げ、その分、開業医の診療報酬を引き下げてきた。いま、来年度の診療報酬改訂に向けて議論が真っ盛りだが、さらにこの政策を推し進めるべきだ。

・医師を補助する医療クラーク(事務員)制度ももっと充実させたい。能力のある看護師や助産師を育て上げ、医師の仕事量を減らすことも重要だ。

・地方の郡部などでは医師が不足している。この地域的偏在を解決するには、前述した問題の臨床研修医制度を臨機応変にその都度、見直していく必要がある。研修医が都市部に集中し、医師不足を表面化させた元凶だからだ。

 

医師の偏在とは、医師が特定の地域や診療科などに偏って属していることです。医師の絶対数が少ないこと、厳しい勤務形態や訴訟リスクのために、特定の診療科に医師が集まりづらいことが、診療科による医師の偏在の原因として挙げられています。

また、地域ごとの医師数の格差も大きくなっており、都市部に多くの医師が集まり、都市から離れた地方では掲げた診療科の医師が集まりづらくなっています。これは、医師自身の医療技術の向上や、医療体制・医療設備の充実、交通等の利便性などを考慮した場合に、都市部のほうがメリットは大きいことが理由として挙げられます。

医師の偏在への対策として、医学部の定員増加や、結婚・出産などで現場を離れた女性医師への復職支援などがあげられていますが、状況が改善されるにはまだ時間がかかる見通しです。

 

医師が大都市部に集中し、地方の医師不足が深刻化している。政府などは医学部の定員増や地域勤務を義務づける「地域枠」を導入したが、効果はすぐに出ていない。「このままでは地域医療は崩壊する」。厚生労働省の検討会では医師に地域での勤務を半ば強制的に課す案も浮上した。同省は年内に抜本的な対策をまとめる方針だが、地域勤務の義務化を嫌う医師らの反発も強い。医療の質を維持しながら偏在問題を解決できるのか。議論の行方は不透明だ。

 

「地域枠」制度は、地域医療を担う医師を養成し、地域医療の偏在解消に資することを目的とした制度で、卒業後に指定の施設で働くことを条件に、奨学金による授業料免除などのメリットが受けられる。

 

「メリット」

・入試のハードルが低い(地元出身だと特に)

・返済不要の奨学金がもらえる

・地域医療に進みたい人にはぴったり

 

「デメリット」

・卒業後の進路に制限がかかる

・専門医の資格がとりにくい

・やむを得ない事情で離脱すると数千万の返済義務が生じる

・プライベート(恋愛など)にも影響がある

・途中で考えが変わっても後戻りできない

 

地域枠制度は、平成20年度から始まったばかりですが、すでに5年連続で入学者は1000人を超えています。このまま、地域枠出身の医師が増え続ければ、たしかに地方の医師不足は改善されるかもしれません。

しかし、現状の地域枠制度は未来ある優秀な若者の将来を縛りつける制度となっています。奨学金はまだしも、職業選択の自由は解消が望まれます。

 

さらに、最近新たな通知が厚生労働省からだされました。この内容は、地域枠の学生の名簿を作り、病院側に配布して、地域枠関連外の病院でのマッチングを禁止するというもので、たとえ奨学金を返しても地域枠から離脱することができなくなりました。

 

地域枠学生の義務違反を知りながら採用する病院に対しても、ペナルティとして補助金の削減を行うことが決定しました。

 

地域医療は、今後の日本にとっては必要不可欠な存在ですが、それを支える医師を取り巻く環境はいまだ十分とは言えません。医師の地域偏在、診療科偏在は根深い問題で、地域枠制度だけで改善されるものではないと考えます。

 

このまま地域に医師を縛りつけようとするのではなく、地域に医師が集まってくるような社会に変わっていってほしいと切に願います。

 

地域枠では6年間の医学部在学中の奨学金を受ければ、通常は1.5倍の期間、9年間の地域勤務が義務づけられる。だがたとえ義務でも、無理な配置をすれば医療の質の向上だけでなく、義務期間を終えた後に県内にとどまってくれることも望めない。

 

こうした地域枠の医師を都道府県が責任を持って医師不足地域に配置するため、全国で「地域医療支援センター」の開設も進んでいる。それでも地域枠の医師は第1陣が医学部を出て、臨床研修を終えたばかり。実際に成果が出るのは「まだまだこれから」。地域医療の崩壊のスピードの方が早い恐れもあり、「地域枠だけでは遍在問題は解決できない」との指摘もある。

 

医学部の地域枠入試制度とは、地方の医師不足や診療科による医師の偏在を解消することを目的に、大学医学部が実施している推薦入試制度のことです。国公立や私立など大学の種別にかかわらず実施され、地域枠推薦を受ける条件は異なっています。

 

地域枠制度の導入状況

現在、医学部定員増による地域枠制度は全国の79大学中、地域枠を設定しているのは71大学(90%)。このうち、地元出身枠を設定しているの は46大学(65%)であり、制度導入大学のほとんどが奨学金あり枠を導入していることになる。また、中大都市群と 小都市群を比べると奨学金を支給する制度、支給しない制度、編入学地域枠ともに後者の方の導入率が高い 傾向を示し、医師不足の程度が影響している可能性が高い。

 

奨学金の有無

義務履行年限などの違いにより地域枠制度の種類は多岐にわたるが、大別して以下の区分に分かれる。

:卒後、一定の義務履行を条件として奨学金の貸与を行うもの

:別枠で入学選抜を実施するもの

:入学後選抜を行うもの

:別枠で選抜し、卒後、一定の義務履行を条件とするが、奨学金の貸与を行わないもの   

:別枠で選抜し、卒後義務履行および奨学金貸与のないもの

 

地域枠入学試験を実施している大学

[北海道・東北地区]

旭川医科大学、札幌医科大学、弘前大学、岩手医科大学、東北大学、東北医科薬科大学、秋田大学、山形大学、福島県立医科大学

[関東・甲信越地区]

筑波大学、獨協医科大学、群馬大学、埼玉医科大学、千葉大学、東京医科歯科大学、杏林大学、順天堂大学、昭和大学、帝京大学、東京医科大学、東京慈恵会医科大学、東邦大学、日本大学、日本医科大学、横浜市立大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学、東海大学、新潟大学、山梨大学、信州大学

[東海・北陸地区]

富山大学、金沢大学、金沢医科大学、岐阜大学、浜松医科大学、藤田保健衛生大学、愛知医科大学、名古屋大学、名古屋市立大学、三重大学、福井大学

[関西地区]

滋賀医科大学、京都府立医科大学、関西医科大学、近畿大学、大阪市立大学、大阪医科大学、神戸大学、兵庫医科大学、奈良県立医科大学、和歌山県立医科大学

[中国・四国地区]

鳥取大学、島根大学、川崎医科大学、岡山大学、広島大学、山口大学、徳島大学、香川大学、愛媛大学、高知大学

[九州・沖縄地区]

産業医科大学、久留米大学、福岡大学、佐賀大学、長崎大学、熊本大学、大分大学、宮崎大学、鹿児島大学、琉球大学

医学部地域枠入試制度は国公立や私立など大学の種別にかかわらず、全国60を超える大学で実施されています。

 

これまで医師不足は医師の偏在が問題であって医師数自体は足りていると言い続けていた政府はようやく医師数自体が不足していることを認め、平成21年度以降医学部の定員増を行われることになった。しかし、このような政策では今の危機的状況を脱することはできるとは思えず、まずは地方の勤務医を増やすため今こそ国が積極的な支援をすべきだと考える。ここまで医師が疲弊し医療崩壊が起こったのは、 医療費抑制政策の一環として行われた国の間違った医師抑制政策のつけなのであるから。

 

医師不足について、根本的には絶対的な人数の不足があります。そして、これが「地域偏在」や「診療科偏在」につながっています。

これらを解消するために、医学部入学定員で「地域枠」としての増員が行われています。「地域枠」での募集は、僻地の医師を確保するだけでなく、診療科偏在の解消も目的の1つとしています。

「地域枠」を受験する人は、「診療科偏在」のことも調べておいた方が良いと思います。また、自分が受験する医学部のある県や町の医療についても分かる範囲で調査しておいてください。

「診療科の偏在」としては、産婦人科・小児科・内科・麻酔科などで医師の数が減少しており、特に産婦人科は現象が著しいようです。

 

絶対的な医師の不足・医師の偏在・診療科の偏在などを解決する1つの手段として、地域枠入試による入学定員の増員があります。地域枠入試での募集定員は年々増加しており、この区分で受験をする場合には、面接試験において地域医療に関する自分の考えをしっかりと持っていなければなりません。

 

全国の地域枠卒業生は徐々に増加し、2~3年後からは毎年1,000人以上の地域枠学生が卒業することとなる。したがって、これら卒業生の義務履行が順調に推移すれば、現時点での全国の医療機関が必要である と考えている医師数約24,000名は、今後約10年程度でその約半数弱が地域枠で充足するとも 考えられる。しかし、医師の需給状況は人口の都市部偏在と地域の地理的状況によるアクセスの問題、疾病 構造、医療の進歩などの様々な要因に左右されることを考えれば、このことはあくまで現時点での必要総医 師数の予測に留まり、偏在解消には更なる検討が必要となる。

 

※医師偏在解消へ認定制度 政府方針 少数区域勤務に動機付け

 

医師が少ない地域で勤務した医師を厚生労働相が認定し、認定を受けた医師を病院経営の責任を担う管理者(院長など)になる際の評価基準にする認定制度の創設などが柱。医師の少ない地域での勤務を促し、地域間で医師の人数に差がある「偏在」を解消する狙い。医師偏在の度合いを示す指標を導入し、医師の配置調整にも乗り出す方針だ。

 

認定制度は、医師不足が問題となっている地域医療を支えるため、こうした地域で勤務する医師に、インセンティブ(動機付け)を与える仕組み。医師不足地域で勤務した医師自身が認定申請し、厚労相が認定証明書を交付する。

認定する際の勤務期間は今後検討する。平成32年4月1日の施行を目指している。

 

医師偏在に関する指標はこれまで、一般的に「人口10万人対医師数」が用いられているが、医療ニーズや将来の人口動態などは考慮しておらず、医師偏在対策の「モノサシ」になっていないとの指摘がある。このため、新たに導入する指標では将来の人口動態を踏まえた上で、医療ニーズに基づき、地域や診療科ごとに医師が多いか少ないかを客観的に把握できるようにする。

 

都道府県の権限を強化するのも柱の一つ。各都道府県は医師偏在に関する新たな指標を踏まえ、医師の確保対策や目標を明記した「医師確保計画」を策定し、3年単位で見直す。都道府県内の「医師少数区域」と「医師多数区域」を指定し、多数区域から少数区域に医師が配置されるように調整する。

 

このほか、都道府県知事が大学の医学部に対し、定員の一部に地域枠や地元出身入学者枠を設けたり、その枠を拡充したりするよう要請できる権限を与える。厚労省の調査によると、大学医学部の入学者のうち地元出身者が卒業後も、その都道府県に定着する割合は約8割に上っており、こうした傾向を踏まえた対策だ。都道府県の権限強化は31年4月1日の施行を予定している。

 

こうした施策に対し、医療界は「医師は自由で、強制的に規制されるべき存在ではない」と強く反発するだろう。しかし医師は国民の健康を守る公共性の強い存在だ。そして医師不足、医師偏在で大きな損害を被るのは患者である。医療はだれのためのものか。医師のために医療があるのではない。

 



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